サンショウウオ属とは?-What’s Hynobius?-

 サンショウウオ属とは,学術的にはHynobius と呼ばれるサンショウウオの一群のことで,日本以外では,朝鮮半島,中国本土,台湾に分布しています。本属は,スイス人の探検家兼外交官であったJohann Jakob von Tschudiによって,1838年に書籍「Classification der Batrachier mit Berucksichtigung der fossilen Thiere dieser Abtheilung der Reptilien」の中で記載されました。

 本属の記載に際し,本属の代表種として,当時既に発見および記載されていたカスミサンショウウオ(現在のHynobius nebulosus)という種が,本属の代表種(専門的には,タイプ種とされます)として,本書籍の中で指定されました。カスミサンショウウオは,ドイツ人の医師兼博物学者であったPhilipp Franz Balthasar von Sieboldがオランダに持ち帰った標本に基づいて,オランダ人の動物学者であったCoenraad Jacob Temminckとドイツ人の動物学者であったHermann Schlegelによって,1838年に「日本動物誌 (Fauna Japonica)」の中でSalamandra nebulosaとして記載されました。Hynobius が記載されたことで,本種はSalamandraからHynobius に移されることになり,現在でもHynobius に属しています。日本はHynobius の歴史が始まった地であると同時に,当会理念の頁でも述べた通り,日本で著しく種分化したグループであり,全種が日本固有種という現状を鑑みても,日本で本属を保全していくことが,世界で本属を保全していくことにもつながってくると考えられるのです

サンショウウオ属ではないサンショウウオの仲間

 サンショウウオ属は,沖縄県を除く全都道府県に分布していますが,日本に分布しているのはサンショウウオ属だけではありません。日本で比較的広く知れ渡っている本属以外のサンショウウオの仲間としては,30 cmを超えて非常に大型になるオオサンショウウオの仲間 (Andrias) と,腹側が赤くなるイモリの仲間 (Cynops) が有名かもしれません。

 他にも,奄美群島と沖縄諸島に分布し,肋骨が皮膚から突き出る特徴をもつイボイモリの仲間 (Echinotriton),本州と四国の山地を中心に分布し,肺をもたないハコネサンショウウオの仲間 (Onychodactylus),そして北海道の釧路湿原周辺に分布し,頭骨に大きな間隙(専門用語では泉門)をもつキタサンショウウオの仲間 (Salamandrella) が日本に分布していますが,オオサンショウウオやイモリに比べると,全国的にはあまり知られていないサンショウウオの仲間と言えるかもしれません。

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